統合失調症とは、人格がバラバラに分裂することではありません。体内にある生化学物質の異常によって起る病気をまとめて表現した言葉で、これが起ると、身体的・精神的・感情的な面に影響を及ぼします。
例えば、統合失調症になった場合には、聞くこと・見ること・味わうこと・考えること・感じることにおいて、以前とは違うことが起ります。
この統合失調症の傾向は、遺伝によって受け継がれるという研究もいくつかあります。全人口の1~3%の人がこの病気の影響を受けているといわれており、特に、あらゆる階層の若い世代に見られるようです。
専門家の中には、患者の父親・母親・社会・環境などに責任を求める人もいますが、科学的な説明としては、体内で起る生化学反応の過程で何らかの異常が起こることが統合失調症の原因であると言えます。
ほかの病気と同じく、統合失調症には徴候が現れます。
ですから、もし統合失調症かもしれないと疑うような徴候が見られた場合には、専門医に診てもらうのがよいでしょう。
以下は、統合失調症を発病している方によく見られる徴候を挙げます。
何をもって統合失調症とするかには、大きな見解の違いがあり、診断を下す方法にもいろいろあります。統合失調症の患者やその家族が受ける説明でよく言われていることは、統合失調症になると感情の乱れが起る、ノイローゼになる、子どもっぽい性格になる、知能が遅れる、などです。
しかし、不幸なことに、どのような西洋医学的治療を行なっても、多くの方々が改善しません。
診断に最も重要なのは、医師による臨床観察です。とても役に立つのが心理学検査で、ホッファー・オズモンド式HOD検査と呼ばれるものです。検査が簡単で、迅速に行うことができ、診断に役立つような工夫がなされています。
統合失調症は治療をせずに放置した場合、自然な回復率が約35%といわれています。
一般的な治療手段としては、抗精神薬の使用、心理療法、電気ショック療法(ECT)が使われています。
統合失調症の治療に対する考え方を教える医学校はたくさんありますが、心理療法だけで効果のある治療を行なうことはできません。
電気ショック療法や抗精神薬も、ほかの療法を複数組み合わせた治療体系の中で役立つことはありますが、それだけで永続的な効果を得ることはできません。
現時点では、正常生体分子治療(オーソモレキュラー・トリートメント)を行うことが80%以上の効果があったとして確認されており、最良の治療方法であると考えられます。
正常生体分子治療のなかでは、特別な食事療法、患者に欠乏したビタミンやミネラル補給を行うほかに、抗精神薬や心理療法などを必要に応じて補助的に使います。
統合失調症の患者の多くが低血糖症を示しており、アレルギーも見られるため、これらの治療も行ないます。
統合失調症は怖い病気のひとつです。患者やその家族の社会生活にも深刻な影響を与えるからです。
生活保護や福祉費用、医療費、就業の難しさ、学習障害、アルコール依存症、家庭崩壊、自殺などの問題を考えるうえでも、統合失調症は重要な論点となります。
統合失調症患者ひとりにつき、一生涯で100 万~200 万ドルの費用が公的資金から使われるとも言われ国の医療財政の大きな負担になっています。
正しい診断と治療が行なわれなければ、統合失調症は克服できません。
国際統合失調症基金の目的は、以下によって統合失調症を克服することにあります。
オーソモレキュラー治療とは、身体のアンバランス・代謝を改善する事により、脳と身体に可能な限り最適な生化学的環境を与える治療のことです。
それには、適切な食事と栄養療法、そして欠乏には、必要なビタミン、ミネラル、アミノ酸、酵素、必須脂肪酸などを補完することによって行います。
ビタミンやミネラルの補給は、患者の欠乏状況に合わせて行ないます。正しい食事療法を行なうことが大切な治療のひとつです。
低血糖症、アレルギー、甲状腺障害の治療なども必要であれば行ないます。期間を限り、抗精神薬を使うこともあります。
また、補助的に他の療法を行なうこともあります。
オーソモレキュラー治療は、さまざまな症状に対して適用することができます。
統合失調症、そのほかの精神と心の病、子どもの行動・学習障害・自閉症、加齢への抗老化医療、アルコール依存症、中毒症、関節炎、心臓病や循環器障害、ガンなど多くの病気の治療に適用することができます。
オーソモレキュラー治療は、とても安全な治療です。
ビタミン剤を摂取することで不快感を経験する場合も極少数に限ってありますが、医師が別のビタミン剤に変更したり、摂取量を調整してくれるので問題はありません。
統合失調症の治療の場合、米国統合失調症連合委員会が行った1500 名の患者追跡調査により、80%の回復率であることが報告されています。
別の医師団体からは、75%以上の回復率と、子どもの場合はより高い確率で回復していることが報告されています。
オーソモレキュラー治療は、この他の障害に対しても非常に治療効果が高いことがわかっています。例えば、うつ病、子どもの行動・学習障害、自閉症、アルコール依存症、老化に伴う障害などがあります。
ホッファー医師の精神と心の病への考え方:
病気が急性期の時は、投薬が最も即効性が高く必要不可欠な場合が多い。
しかし、ひとたび投薬により症状が収まると次に来るのが薬の副作用である。患者はこれによって身体が普通どおりに機能しなくなる。また、投薬の副作用で苦しみ、悩む患者は少なくない。
ここで患者は逃げることの出来ない問題に直面する。副作用を嫌って投薬を止めると病気が必ずと言ってよいほど再発する。しかし薬を服用すると眠気、倦怠感、焦燥さらには悪性症候群、ジスキネジー、高血糖などの副作用に悩まされる。
私たちは風邪をひくと必ず1週間も我慢すれば治る事を知っているので、薬で症状を抑え自分の免疫が風邪ウイールスを退治してくれるのを待つ。しかし精神と心の病の患者さんたちは、治癒の糸口が見えない投薬だけを強要されるからつらい。
ホッファー医師は統合失調症という病気はもともと存在しないと主張する。人体がひきおこす様々な生化学的アンバランスがこのような症状を作り出す症候群であると説く。
よって治療は急性期には必要な投薬を行い、これを継続し症状を抑えつつオーソモレキュラー治療をおこない、症状を作り出す体内の根本要因を生化学的に修正し病状が改善したら投薬を減らす。
最終的に投薬を止めた事例、微量に抑えた事例は数多い。
これにより患者は人間として機能する“もとのその人”に戻る。
(精神科医師 エーブラム・ホッファー)